テクニカル分析

トレンド転換のチャートパターン。ダブルトップとヘッドアンドショルダーズの正体知ってる!?

 
一見ランダムに動いているように見えるチャートも、ある一定の規則的な形状を示すことがあります。チャートパターンと呼ばれているものですが、主には2本のラインを引くことにより値動きをパターン化することで、その後の動きが分かりやすくなります。

しかしながら、そのパターンは何のために必要なのでしょうか。ただ見つけたというだけでは全く意味がなく、自分が何故そのパターンを見つけようとしているのか。その本質的な部分を、しっかり理解することが大切です。

1.保ち合い相場を分かりやすく見せてくれる

チャートパターン分析というのは、チャートの中に現れる一定の形状を見つけ出して、過去のパターンからその後にどう動くのかを認識することです。

有名な相場格言に、「保ち合い(もちあい)放れにつけ」というものがあります。保ち合い相場であることを認識し、そこは方向感がなく値幅もないために手を出さず、そのエネルギーを開放する放れについていくというものですね。

しかしながら、ランダムに動いているように見えるチャートの中に、ある一定のパターンを見つけることができなければ、どこまで待ってどこでエントリーすれば良いのか全く分かりません。

チャートパターンを見つける意味は、この保ち合い相場を視覚的に捉えやすくし、エネルギーが開放されるであろうポイントを見つけるためにあるんです。

1-1.多くの投資家が意識してはじめて通用する

多くの投資家が意識しているから通用する、その最たるものが水平線やトレンドラインです。しかしながら、そこにいくらラインを引くことができても、他の多くの投資家が意識することがなければ全く機能しません。少しトレード経験がある方であれば、理解していただけると思います。

その他大勢が意識するラインであれば、そのラインを抜けたとき大きく値は動きます。その他大勢が意識しているために、そこに指値注文や損切り注文が集中し、また抜けたときの成り行き注文も巻き込んでいくためです。

チャートパターンも同じで、そこにいくらパターンを見つけることができても、その他大勢が意識できなければ全く意味を成しません。

1-2.チャートパターンを大きく2つに分類する

チャートパターンと呼ばれるものは、

1.天井圏や底値圏で見られるパターン:ヘッドアンドショルダーズ、ダブルトップ
2.トレンドの中で見られるパターン:トライアングル、フラッグ、ペナントなど

の2つに大きく分類することができます。この天井圏や底値圏・トレンドの中というのが、非常に大切な認識になってきます。この部分があいまいなままパターンを見つけたとしても、それをトレードに活かすことはできません。

2.トレンド転換のサインとなるダブルトップ

天井圏や底値圏で見られるチャートパターンとして、代表的なダブルトップとヘッドアンドショルダーズ。トレンド転換の有効なサインとなるだけでなく、分かりやすいエントリーポイントも示してくれますね。ただ、有効に働くためには、いくつのかの注意するべきポイントがあります。

2-1.ダブルトップでは2点目頂点の切り下げ・切り上げを確認

ダブルトップのチャートパターン

上図の左は、理想的なダブルトップと呼ばれるパターンのチャート図ですね。同じレベルで2度高値をつけて、ネックラインと呼ばれる安値を割ったポイントが売りのタイミングとされています。

しかしながら、この左図だけでは実トレードでは応用が効きません。理想的な左図のように、全く同じ高値を2度つけるというのは実チャートではほとんどないからです。

ネックライン割れが売りタイミングとして有効に機能するのは、右図のように2点目の高値が僅かでも1点目より切り下げていることがポイントです。右図のようなダブルトップの場合、比較的ネックライン割れで素直にレートは下げてくれます。

ではその逆に、2点目の高値が1点目よりも僅かに切り上げ(高値更新)ていた場合はどうなるでしょうか。下図を見てください。

高値更新したダブルトップのチャートパターン

僅かでも高値を更新したということは、ダウが継続しているということであり、一見ダブルトップのチャートパターンであったとしても上昇トレンド継続であると言えます。

(*ダウについては、記事:テクニカル分析の元祖ダウ理論!トレンドの継続・転換がまるわかり!?を、確認してください。)

そのため、このパターンのダブルトップでは、ネックラインを割っても素直に値は下げず、一旦ネックラインまで戻るリターンムーブと呼ばれる動きが発生する可能性が非常に高くなります。

未だ上昇トレンド継続と認識する投資家の買い注文による一旦の上昇ですが、結局ネックラインに押えられて高値を切り下げ反転し、トレンド転換が明確になります。

ただ、リターンムーブが起こる可能性が高くなるというだけで、もちろん素直に下げてくる場合もあります。その可能性が高いという認識をもっているかどうかということが、その後のトレード戦略に大きく影響してくるんですね。

 
また、ダウ継続で上昇トレンド継続という認識から、上図の点線のようにネックラインで反発して再度高値を試す動きになる可能性も高くなります。

このとき、ダブルトップの2点目の高値更新が僅かだったことから、ネックラインで反発しても2点目の高値を再度更新できるエネルギーがなく、上図のように後述するヘッドアンドショルダーズのチャートパターンを形成して、トレンド転換を決定付ける動きを示す可能性が高くなることもポイントです。

2-2.ダブルトップを形成した実チャートでの売りポイント

それでは、実チャートでダブルトップのチャートパターンを形成したときに、どのようにトレードすれば良いのかを考えてみます。下図を見てください。

僅かに高値更新したダブルトップ

ずっと上昇トレンドを継続してきたレートが、ダブルトップを形成してからネックラインを割って下落に転じています。ローソク足に合わせて表示した移動平均線でも、しっかり認識できるダブルトップですね。

ここで注目しなければいけないのが、少し見辛いですが2点目の高値が1点目を僅かに更新しています。ということは、ネックラインを割っても一度反転して戻してくる可能性が高いということです。

実際にネックラインを割ったあと、一度反転してリターンムーブを形成してから本格的な下落となっています。もちろんネックライン割れでエントリーしても良い局面ですが、一度戻してくる可能性が高いということから、上図の反転ポイントでのエントリーが理想的だと言えます。

補足ですが、このようにネックラインではっきりと反転したとき、相場はこのラインを確定させたことになり、その後上昇する意志はないと宣言したことと同意となります。安心して売っていける相場になったと、はっきりと確定させたことになります。

 
このように、ダブルトップのチャートパターンでは、2点目のトップが1点目を更新したか否かが重要になります。そこを意識してチャートを見る習慣をつけてください。

3.ヘッドアンドショルダーズの真の正体とは?

ヘッドアンドショルダーズの基本的チャートパターン

続いてはダブルトップと同じく、トレンド転換を示すチャートパターンとして重要なヘッドアンドショルダーズです。酒田五法の中では、三尊とも呼ばれていますね。

最も信頼できるトレンド転換を示すチャートパターンです。何故なら、そこに明確なダウによる転換を確認することができるからです。

(*ダウについては、記事:テクニカル分析の元祖ダウ理論!トレンドの継続・転換がまるわかり!?を、確認してください。)

 
上図は、理想的なヘッドアンドショルダーズのチャート図です。その名の通り、人の肩と頭を表したような形状をしていることからこの名が付いていますが、右図のように逆(逆三尊)になっても考え方は同じです。

高値を更新し続け上昇してきたレートが、上図のように3点目の高値で再度更新ができず、前回安値に引いたネックラインを割ることで本格的なトレンド転換を決定付けるパターンです。ダブルトップと同様に、このネックラインを割ったところがひとつのエントリーポイントとなりますね。

3-1.ヘッドアンドショルダーズの成り立ちを理解する

先ほどの図のように、きれいな理想的な形状になることは実チャートでは少なく、もう少し応用が効く理解が必要になります。そのためには、ヘッドアンドショルダーズができる成り立ちを理解し、ネックラインとは何なのか?何故そこでエントリーが可能なのか?という深い認識が大切になってきます。下図を見てください。

実践的なヘッドアンドショルダーズのチャートパターン

少し複雑なチャート図に見えますが、ここにヘッドアンドショルダーズの基本が全て詰まっているので、しっかり理解してください。上図のようなチャートパターンができあがっていく過程を、順に考えていきます。

3-1-1.安値を切り上げ高値を更新し、上昇トレンド継続

安値を切り上げ高値を更新している上昇トレンドのチャート

(1)から(A)に高値を更新し、(2)から(B)へ安値を切り上げていることから上昇ダウが成立し、上昇トレンド継続の局面です。その後、(B)から上昇し(A)の前回高値を更新した時点で引き続き上昇トレンド継続、(2)から(B)に上昇トレンドラインを引くことができるようになります。

この段階では、誰がどう見ても上昇トレンド中ですね。

3-1-2.上昇トレンド継続中だが、トレンドライン割れでやや弱気に

上昇トレンド継続中でもやや弱気になったチャート図

その後新たに(C)で高値をつけて下落し、前回の高値である(A)のラインを割ってきたことで、次回の上昇では高値を更新できない可能性が出てきました。更に(3)でトレンドラインを割ってきたために、相場がこれまでの強気相場からやや弱気になってきたことが分かります。

ただし、それから新たな安値(D)をつけますが、この時点では未だ高値を更新し安値も切上げている状態なので、あくまで上昇トレンド継続中です。間違っても、トレンドラインを割ってきたからといって、(3)のポイントで売りエントリーすることのないようにしてください。

3-1-3.トレンドラインで反転、ネックライン割れで売りエントリー

ヘッドアンドショルダーズの明確な売りポイント

その後(E)で新たに高値を更新することができず、トレンドラインで反転しています。

この(D)から(E)への上昇は、先述のダブルトップのところで説明したリターンムーブと同様の動きと捉えることができます。(D)で安値をつける時点では未だ上昇トレンド中のため、上昇を狙う投資家による買い注文によってできる上昇です。

しかしながら、それまで支えられていたトレンドラインを割ってしまうと、今度はこのラインが上値抵抗線として機能し始める可能性が高まってくるんですね。実際に(E)で、これまで支持線として機能していたトレンドラインが抵抗線に変り、反転リターンムーブして下落に転じています。

このとき、(B)から(D)へ新たなトレンドラインを引くことができ、これがネックラインとなります。(E)の反転でヘッドアンドショルダーズはほぼ完成し、あとはこのネックラインを割ってくるのを待つだけとなりますね。

このようにネックラインというのは、再度引き直されたトレンドラインであるということです。(E)で高値を切り下げを確定した後の、再度のトレンドライン割れ。これが、ヘッドアンドショルダーズです。

このように考えてみると、ヘッドアンドショルダーズというのは、ダウやトレンドラインといったトレードの基本事項を、ただパターン化したものに過ぎないということが分かりますね。

3-2.ヘッドアンドショルダーズを実トレードで応用する

それでは、ヘッドアンドショルダーズを実チャートで確認し利用することを考えてみます。下図を見てください。

ヘッドアンドショルダーズの実トレードでの応用

上図は、大きな下降トレンドの中で一旦戻り目を築いている局面です。図の(A)〜(E)のポイントは、先ほどの説明で使ったポイントに対応しています。はじめは少し見つけ辛いと思いますが、実チャートではこのような形で現れてきます。ネックラインが引けたあと、それを割ったポイントから再びしっかり下げていますね。

このように、大きなトレンドの中の押し目・戻り目でヘッドアンドショルダーズが確認できると、押し目買いや戻り売りといったエントリーがもの凄く簡単になります。

ただ、これまで述べてきたような成り立ちやその意味といった深い認識がなければ、これをヘッドアンドショルダーズと認識して、かつトレードに応用するのは難しいんですね。

また、ヘッドアンドショルダーズは上図のように、大きなトレンドの中の押し目・戻り目や、大きなトレンドの転換圏で現れたときにその威力を発揮してくれます。ダブルトップと共に、これらはトレンド転換を表すチャートパターンでしたよね。

いくら値幅の無い保ち合い相場やレンジ内で見つけても、全く機能しないので注意してください。

4.まとめ

代表的なトレンド転換を表すチャートパターンである、ダブルトップとヘッドアンドショルダーズについて考えてきました。

ただ理想的な模式図を覚えて、ネックラインを抜けたらエントリーというだけでは全く使えないことが理解して頂けたと思います。また、これらを理解するためには、ダウ理論が全ての基礎になることも理解して頂けたと思います。

こうした本質を理解することによって、少し形が崩れたとしてもさまざまに応用することが可能となります。特に、トレンドフォローで押し目買いや戻り売りをする際には、強力な武器となってくれます。

是非これからはチャートを見る際に、上記のような動きを意識的に見るようにしてみてください。チャートが全く違う表情を見せてくれるようになるはずです。