テクニカル分析

ダイバージェンスって何を教えてくれるの!?トレンド転換のサインじゃないんだって!!

 
ある程度トレード経験のある方であれば、ダイバージェンスという言葉を知らない方は少ないと思います。一般的には、レートは上げているのにオシレーターが下げている状態を指しています。

多くの書籍やウェブサイトでは、これをトレンド転換のサインとして紹介していることが多く、それを鵜呑みにして損失を膨らました方も多いのではないでしょうか。

ダイバージェンスの本質とは何なのか?実トレードでどのように応用すれば良いのか?ということを、ここでは考えてみたいと思います。

1.ダイバージェンスは何を教えてくれるのか?

オシレータと呼ばれるインジケータには、ストキャスティクスやRSI・RCIなど色々ありますが、ここではその中でも代表的なストキャスティクスを例に考えます。

ストキャスティクスの基本については、記事:ストキャスティクスって必要!?買われ過ぎ売られ過ぎなんて表してません!!で確認してください。本質的には、他のオシレーターについても考え方は全て同じと捉えてください。

早速ですが、下図を見て下さい。

ストキャスティクスによるダイバージェンス発生の基本

上図は、20期間の移動平均線とそれに対応した20期間のストキャスティクスを表示させた、ドル/円5分足の実チャートです。移動平均線もしっかり上を向きながら、高値を更新し続けている分かり易い上昇トレンド中のチャートです。

図の(A)の局面で、高値を再度更新したのにも関わらず、ストキャスティクスの高値は切り下げていますね。この状態が、ダイバージェンスの基本である、レートは上げているのにオシレーターが下げている状態です。

その後レートは勢いがなくなり、一旦ずるずると下げてきています。このように(A)の局面を見てみると、ダイバージェンスの発生はトレンド転換・反転のサインとして使えそうな気もしてきます。

では、次の図を見てください。

ダイバージェンスが発生してもトレンド転換しないチャート

上図は、先程と全く同じチャートですが、(B)の局面を見てください。(A)の局面と同じように、レートは高値を更新しているのにも関わらずストキャスティクスは切り下げて、ダイバージェンスが発生していますね。

しかしながら、その後レートは下げることなく、トレンドを継続しながら上昇しています。このダイバージェンスを手掛かりに、トレンド転換のサインだから売ろう!というようなトレードをしてしまうと、どんどん損失が膨らんでしまいます。

このように、ダイバージェンスはトレンド転換・反転を教えてくれるサインではないのです。

1-1.その方向への勢いの低下を教えてくれている

ダイバージェンスが発生するというのは、単にトレンドの勢いがなくなってきたということです。

ストキャスティクスの本質から端的に言うと、「前回の上昇率よりも今回の上昇率の方が低かった」ということです。前回のレートの山よりも、今回のレートの山が小さかったことを表していて、それはすなわち上昇の力がなくなってきたと判断できます。

それ以上の意味をダイバージェンスに与えてしまうと、意味のない負けトレードを増やしてしまいます。結果的にトレンドの転換点になることはありますが、ダイバージェンス単体では反転のサインにはならないことを覚えておいてください。

2.値動きとストキャスティクスでトレンドを追いかける

それでは、また先程のチャートを使って、値動きとストキャスティクスでどのようにトレンドを追いかけていくのかを考えてみます。仮にこの上昇トレンドに乗って、買いポジションを保有していたとしましょう。

先程のチャートを、もう一度見てください。トレンドをより分かり易くするために、トレンドラインを加えています。

ダイバージェンス発生による決済方法

安値を切り上げながら高値を更新する、上昇トレンドを築いてきたレートが(B)の局面を迎えました。ここでダイバージェンスが一旦発生し、そろそろ上昇の勢いも衰えてきたかな?と考えます。

しかしながら、まだ移動平均線も上向きかつ、トレンドラインよりもレートはしっかり上に位置しているため、これらを割ってくるまではポジションを保有していても良いかな?と考えることができますね。

その後レートは更に高値を更新し、上昇していきました。短期的に一旦相場は弱気になりかけたものの、再度買い方勢力が優勢になったということです。

そして(A)の局面を迎えて、再びダイバージェンスが発生します。(B)のときと同じように、上昇の勢いがなくなってきたかな?と考えます。その後(C)で、移動平均線も下を向き始めレートも移動平均線を割ってきました。かつ、トレンドライン・直近安値もしっかり割ってきているため、ここは一旦決済しても良いと判断できるポイントになります。

 
このようにダイバージェンスは、単体でトレンド転換やエントリーのサインとして使うのではなく、トレンドの勢いが衰えてきたことを示す指標と捉えてください。

上記のように、高安値の切り上げ・切り下げを追いかけるダウやトレンドラインなど、相場は実際の値動きから判断することを大前提として、エントリーや決済のひとつの根拠として加えるのが良いと思います。

*ダウについては、記事:テクニカル分析の元祖ダウ理論!トレンドの継続・転換がまるわかり!?を確認してください。

3.ダイバージェンスを押し目買いに利用する

ダイバージェンスの発生を、その方向への勢いがなくなってきたと判断することで、トレンドフォローの基本である押し目買いや戻り売りにも利用することができます。

下図を見てください。大きな下降トレンド中の、一旦戻り目を築いている局面のドル/円5分足のチャートです。

ダイバージェンスを押し目買い・戻り売りに利用する方法

上位足からはしっかりとした下降トレンド中で、何処かで売りエントリーを仕掛けたい局面です。

順調に下降してきたレートが一旦戻り目を築いて、(1)の局面を迎えました。高値を切上げているのにも関わらずストキャスティクスは切り下げて、ダイバージェンス発生です。ということは、そろそろ一旦の戻り目の上昇勢いは衰えてきたかな?と考えることができます。

その後移動平均線を下抜けて、しっかり移動平均線で反転してから高値切り下げ・トレンドラインブレイクとつながっています。このときストキャスティクスも、ダイバージェンスからしっかり下を向いて、相場は弱気になってきたと判断することができます。あらゆる根拠が重なって、上図の緑丸の局面は売るしかないポイントになります。

 
その後は一気に下げてくると思ったものの、(2)の局面を迎えて、安値を切り下げるもののストキャスティクスは切上げて、再度ダイバージェンスが発生しています。ということは、下降トレンドの勢いももうあまり残っていないのかな?と考えることができます。

(2)の局面以降、小さく安値を切り上げながら移動平均線も上抜けてきた(3)は、一旦決済しても良いと判断できるひとつのポイントになりますね。実際に、その後レートは一気に上昇していく展開となりました。

*ストキャスティクスをトレンドフォローへ応用する基本概念は、著書「維新流トレード術」で解説されている著者独自の概念です。

4.まとめ

ストキャスティクスをはじめとするオシレーターを追いかけることで、値動きだけでは見えない相場の側面を見ることができます。ダイバージェンスも正しく利用することで、エントリーや決済のひとつの根拠として使えることが理解して頂けたのではないでしょうか。

慣れてくると、ダイバージェンスなどはわざわざオシレーターを見なくても、値動きからその発生が見えるようになります。

慣れるまでは難しく感じるオシレーターですが、基本的な見方だけでも身につけることで大きな武器となってくれます。是非、ご自身のトレードにも取り入れてみてください。

*ダイバージェンスには、もうひとつ隠れたダイバージェンスが存在します。詳しくは、記事:トレンドの継続を教えてくれる隠れたダイバージェンス!?そんなの初めて聞きました!!を、確認してください。