テクニカル分析

トレンドラインを割ってもトレンド転換じゃない!?ラインを抜ける意味を理解しよう!!

 
チャートにラインを引く技術は、トレーダーが必ず身につけておかなければならない能力です。ただ、トレンドラインをはじめとするラインは、主観で好きなように引くこともできるため、自分の願望を投影したラインも引けてしまいます。

本当に機能するラインを引くには、ある程度の鍛錬と経験が必要になりますが、ただやみくもに引いていても上達はありません。そのラインは何のために引くのか、と常に自分に問いかけながら引くことが大切です。

1.トレンドラインの引き方の基本をマスターする

トレンドラインの基本的な考え方については、記事:誰も教えてくれないトレンドラインの使い方!!押し目・戻り目でエントリーし放題!?を確認してください。

 
まずは下図を見てください。左図は、上昇トレンド中の安値と安値を結んだ上昇トレンドライン(赤線)を、右図は下降トレンド中の高値と高値を結んだ下降トレンドラインを示しています。

支持線として機能する上昇トレンドラインと抵抗線として機能する下降トレンドライン

ダウ理論により、安値を切り上げて高値を更新し続けている限りは上昇トレンドであり、その安値を結んだラインが上昇トレンドラインとなります。それとは逆に、高値を切り下げて安値を更新し続けている限りは下降トレンドであり、その高値を結んだラインが下降トレンドラインになります。

見方を少し変えると、上昇トレンドラインとは上昇を支えるサポートライン(支持線)であり、下降トレンドラインとは下降の高値を押えるレジスタンスライン(抵抗線)と考えることができますね。

*ダウ理論によるトレンド継続・転換については、記事:トレンドの転換は明確なシグナルが出るまで継続する!?ダウ理論の基本を再確認しよう!!を確認してください。

 
トレンドラインは最初の2点を決めれば引くことができますが、やみくもに適当に引いて良いわけではありません。下図を見てください。

直近高値を更新してはじめて確定する上昇トレンドライン

上図のように、上昇トレンドラインを引く際には、起点から2点目となる次の安値に向けて引くことになりますが、直近高値を更新しない限りはトレンドラインを引くことはできません。

直近高値を更新することで、2点目となる安値の切り上げが確定し、起点からその2点目の安値を結んだラインがトレンドラインとしてはじめて確定します。やみくもに安値と安値を結んでも、それは上昇トレンドラインとして機能しないので注意してください。

このように、トレンドラインを引くということは、徹底的にダウを意識することと同意になります。高安値の切り上げ・切り下げ・更新を追いかけながら、そのできたトレンドをサポート・レジスタンスするのがトレンドラインなんですね。

有効なサポートラインとして機能する上昇トレンドラインのチャート事例

2.ラインを割っても即トレンド転換とはならない

トレンドラインは、ダウによって確認できるトレンドをサポート・レジスタンスするラインではありますが、レートがラインを割っても即トレンド転換とはならないことに注意してください。

基本的な機能として、トレンドラインはトレンドの方向・速度を表現しています。レートがラインを割るということは、その速度でのトレンドが終了したことを意味し、その後はより緩やかなトレンドが継続する場合も多々あるんですね。

トレンドの継続・転換はあくまでダウ理論に従うことになり、トレンドラインは根本的なトレンドの継続・転換を表現できないことを忘れないようにしてください。

 
下図を見てください。トレンドラインにサポートされながら上昇してきたレートが、ラインを下抜いた局面を表した模式図です。

レートがトレンドラインを割った後のトレンド転換確定ポイント

上昇トレンドに乗って上昇してきたレートが、(A)のポイントでトレンドラインを下抜いてきました。この(A)で、この上昇速度でのトレンドは一旦終了とみなすことはできますが、上昇トレンドそのものの終了ではないことに注意してください。

上図では実際に、(A)でトレンドラインを一度下抜いたものの、(B)で再度高値を更新して上昇トレンド継続を確定させていますね。

トレンドの終了・転換は、あくまでダウ理論に従うことになります。上図でのトレンド転換確定ポイントは、高値切り下げ・安値更新を確定させる(C)のポイントとなります。

*上記のダウ理論によるトレンド終了・転換が理解しにくい方は、記事:トレンドの転換は明確なシグナルが出るまで継続する!?ダウ理論の基本を再確認しよう!!をまずは確認してください。ダウ理論の理解なしに、トレンドを理解することはできません。

 
上図の(B)で、再度高値を更新し上昇トレンドを継続させたことで、新たなトレンド速度を表現するトレンドラインを引き直すことができます。その後のレートの動きを追った、下図を見てください。

緩やかになったトレンドを表現する引き直したトレンドライン

上図のように、最初のトレンドラインを一旦下抜けたものの、(B)で再度高値を更新したことで、やや傾きが緩やかになった(減速した)トレンドラインを引き直すことができました。ラインを引き直すことで、トレンドの勢いが緩やかになってきたことが視覚的に分かりやすくなりますね。

その後(D)で、再度レートがラインを下抜いていますが、この(D)では未だ上昇トレンドの終了・転換とはなりません。あくまで、この速度でのトレンドが終了したとみなせるだけです。

その後(E)で直近安値をそのまま下抜くと、上昇トレンド継続の条件である「安値切り上げ・高値更新」が崩れることになり、この(E)で上昇トレンド終了となりますね。しかしながら、(E)では未だ高値を切り下げていないためトレンド転換とはならず、あくまで上昇トレンド終了であることに注意してください。

下降トレンドへのトレンド転換が確定するのは、高値を切り下げ安値を更新する(F)となります。

 
ここでもうひとつ、レートがラインを抜けた後の特徴的な値動きについても確認しておきます。下図を見てください。

サポートラインとして機能していたトレンドラインがレジスタンスラインとして機能するリターンムーブ

上図の青◯のポイントで、トレンドラインを挟んでレートが反転しているのが分かりますね。一般的にリターンムーブと呼ばれる値動きですが、通常水平ラインに対してよく見られますが、トレンドラインに対しても起こる値動きです。

それまで上昇トレンドを支えるサポートラインとして機能していたラインが、一転レジスタンスラインとして機能し(下降トレンドの場合は逆)、そのラインが強力であることを確定する値動きであるため非常に重要です。その後、しっかりとしたトレンド転換に繋がる可能性が非常に高くなります。

引き直したトレンドラインで速度が緩やかになった様子が分かる実チャート

3.トレンドラインを決済ラインとして利用する

レートがトレンドラインを割ることで、それまでの速度のトレンドが終了し、その後上昇が緩やかもしくはトレンド転換に繋がる可能性が高くなるため、決済ラインとして利用することが可能です。

もちろん、ラインを割っても即トレンド転換とはならないため、そのままポジションを保有することは可能ですが、そろそろ決済を考えてもよい局面であると認識することができますね。

それでは、実際のチャートでトレンドラインを使って、トレンドを追いかけながら決済のタイミングを考えてみます。下図のドル円1時間足チャートを見てください。

*引用文献:著書「維新流トレード術」より

トレンドラインを決済ラインとして利用する具体的なチャート事例

上図は、サポートラインにしっかり支えられた後、Wボトムを形成して安値切り上げ・高値を更新したポイントで買いエントリーした局面です。

安値を切り上げて高値を更新したことで、エントリー後赤のトレンドラインを引くことができますね。基本的には、レートがラインより上で推移している限りは、上昇に対して優位性がありポジションを保有することが可能となります。

その後(A)で、レートが赤のトレンドラインを割ってきました。ラインを割れば一旦決済と決めていたのであれば、この(A)で決済となります。しかしながら、未だ直近安値も割っておらず高値を切り下げてもいないため、ポジションを保有しても良いとも考えられます。

決済を一度考える局面にはなり、もう少し保有するのであれば、直近安値を割って上昇トレンドが終了すれば一度必ず決済となります。(A)で半分だけ決済して、残りを保有して伸ばすという工夫も良いですね。

 
その後レートは直近安値を割ることなく、(1)のラインでWボトムを形成して支えられて、(B)で再度高値を更新・上昇トレンド継続が確定しています。

トレンドラインを決済ラインとして利用する具体的なチャート事例

(B)で再度高値を更新したことで、青のトレンドラインを新たに引くことになります。さらに(2)のラインで反転リターンムーブ・レジサポラインを形成して、(C)で再度高値を更新してきました。

最初の赤のトレンドラインを割って、一旦緩やかなトレンドに変わるように見えたレートが、(C)で一気に高値を更新したことで、再度速度が増してきたのが分かりますね。

上図の(2)のラインのように、レジサポライン(節目ライン)を形成して一気に高値を更新してきたとき、その節目ラインに支えられた安値に向けて、緑の速度を増したトレンドラインを新たに引くことが可能です。

この速度を増した状態を表現するトレンドラインは、決済ラインとして有効に機能することが多く、この緑のトレンドラインをレートが下抜ける(D)は、ひとつの決済ポイントとなります。

*レジサポラインについては、記事:レジサポライン見逃してない??強力な抵抗線・支持線として、トレードが超ラクに!?を確認してください。

トレンドラインを決済ラインとして利用する具体的なチャート事例

(D)で緑のラインを割っても、即トレンド転換とはならないため、まだポジションを保有することは可能です。その後安値が、(3)のラインで何度も支えられて節目ラインを形成していますね。

しかしながら、分かり易く高値を切り下げながら青のトレンドラインを割り、支えられていた節目ラインも下抜いて安値を更新する(E)は、必ず一度決済しておきたいポイントになります。

トレンドラインを下抜け、高値を切り下げながら安値を更新することで、短期的なトレンド転換が確定するポイントです。ここからは、他の投資家も連鎖的に決済の売り注文を入れてきやすくなるため、一旦必ず決済します。

4.まとめ

トレンドラインを引くことで、トレンドの方向・速度が視覚的に分かりやすくなり、決済ラインとしても有効に機能してくれます。ただ、ラインを抜けたからといって即トレンド終了・転換とはならず、あくまでトレンドはダウ理論に従って判断することになります。

移動平均線などのインジケーターは、値動きを数値化したものですが、ラインは値動きそのものを基準としています。インジケーターは各投資家の数値設定によって異なる挙動を示しますが、値動きそのものを基準とするラインは、分かり易ければ分かり易いほど皆が注目する客観性を持つことになります。

誰もが意識するものだからこそ有効に機能し、そうしたラインをしっかり1本引いておくだけで一気に相場を掴みやすくなります。