FXトレーダー

専業トレーダーになるには法人化が必須!?一匹狼と法人はどっちがお得!?

 
多くの専業トレーダーと呼ばれる方が、必ずと言っていい程ほど所持しているのが法人口座。法人化するべきかどうかのタイミングから、そのメリットやデメリット等を改めて考えてみます。

これからFXを始めてみようと考えている方から、そろそろトレードで独立しようと思われている方まで、今後のトレード環境構築の参考になればと思います。

1.個人での売買に比べて大幅な節税効果

FXである程度稼げるようになると、意識し始めるのが税金です。トレードによる収入は雑所得扱いとなり、税率は一律に20.315%となっています。2011年までは累進課税で、所得が増えるほど税率も上がり最大で所得税40%・住民税10%にもなりました。

専業トレーダーとしては、税金面の負担は大幅に軽減されましたが、それでも大きな負担であることに変りはありません。実際の税額は、以下の式で計算されます。

■{利益(為替差益による収益-スワップ)-必要経費}x税率

必要経費を多く経常すればするほど、納める税金は抑えられることになりますが、個人で売買している場合経費として認められる項目は少ないのが現状です。トレードによる収益に、ほぼそのまま税率をかけられることになります。

例えば、年間1000万円の収益で経費50万が認められたとしても単純計算で、(1000-50)×20.315%=約190万円もの課税となります。

これを法人化した場合には、役員報酬という形で自分に支払われることになり、奥さんなどを役員として報酬を支払うことにすればかなりの節税となります。そうした場合、個人としても所得税を納めることになりますが、給与所得控除などが適用されること及び法人では経費計上がしやすく、トータルとしての節税効果が生まれます。

ただ、最も節税効果の高まる役員報酬等については専門知識も必要で、税理士さんに相談することをお勧めします。個人としてトレードしている限り、税金はそのまま納めるがままですが、法人化によって税金をコントロールできるのは大きなメリットと言えます。

1-1.同じ利益でも法人化によって節税になる一例

トレードによる利益は同じでも、個人の雑所得にかかる税金(20.315%の申告分離課税)よりも、役員報酬にかかる税金と法人の均等割の合計の方が安くなる例を考えてみます。ここでは、トレードによる雑所得が1500万円であった場合を仮定します。

1-1-1.個人取引の場合にかかる税額計算

□1.課税所得=1500万円(雑所得)-209万円(所得控除)=1291万円
□2.税額=1291万円(課税所得)×20.315(税率)=約262万円

1-1-2.法人取引の場合にかかる税額計算

法人化を行い、役員報酬を本人に900万円・配偶者に600万円支払った場合の法人・個人を合わせた税額は以下となります。

■法人にかかる税金
□1.課税所得=1500万円(法人利益)-役員報酬(900万円+600万円)=0
□2.税額=0万円(課税所得)+7万円(法人均等割)=7万円

■本人にかかる税金
□1.課税所得=690万円(収入-給与所得控除)-171万円(所得控除)=519万円
□2.税額=519万円(課税所得)×税率(所得税+住民税)-控除額=約114万円

■配偶者にかかる税金
□1.課税所得=426万円(収入-給与所得控除)-38万円(所得控除)=388万円
□2.税額=388万円(課税所得)×税率(所得税+住民税)-控除額=約74万円

■税合計
法人+本人+配偶者=7万円+114万円+74万円=195万円

したがってこの場合、法人化することによって262万円-195万円=67万円の節税効果が生まれたことになります。

更に実際には、個人の雑所得で認められる経費よりも、法人では多くの経費が認められます。それによって、役員報酬の支払い額はより少なくすることが可能となり、個人にかかる税金はさらに減額されることになります。

また他にも、法人にかける生命保険料による節税や決算期の変更による節税・役員退職金を支払えるメリットなど、個人取引ではただ流れ出ていくだけの利益の一部を、合法的に食い止めることが可能になります。

1-2.個人の資産を守る手段としての法人化

株式会社や合同会社は、原則として有限責任です。債務の支払い義務が生じるのは法人の資産内だけであって、個人の資産にその義務が及ぶことはありません。仮に法人が破綻したとしても、法的には個人の財産にまで債権者は手を出せません。

相場の急変動で、多額の損失を証券会社に負ってしまったとしても、個人保証をしていない限りは法人が債務を負うことになります。株式会社・合同会社の有限責任の原則によって、個人としての追加支払いを免れることができます。

これが個人取引であれば、当然のことながら個人債務となり、無限責任で全ての支払いを背負うことになります。

2.法人化によって9年間もの損失繰り越しが可能

FXで生計を立てていくと言っても、何があるかは分かりません。順調に収益を伸ばしていても、あることがきっかけで大きな損失に繋がります。2015年現在、税金面で個人では3年・法人では9年の損失繰越しが認められています。

例えば1年目に、1000万円もの大きな損失を出してしまったとします。以下2年目から順調に収益が上がっていったとすると、

■2年目 +100万円 ←無税(繰越1年目)
■3年目 +200万円 ←無税(繰越2年目)
■4年目 +300万円 ←無税(繰越3年目)
■5年目 +400万円 ←法人無税,個人そのまま課税(税率20%)

となります。極端な例ですが、損失が出るリスクヘッジとして繰越年数が9年に伸びるのは、専業で生計を立てるトレーダーにはかかせないものかもしれません。

3.他の事業所得との損益通算が可能

FXに加えて、他の事業を並行して行っている方には大きなメリットがあります。自営業を営んでいる方や、フリーランスの方が主な対象となります。

例えば自営業で年間500万円の収益で、FXで500万円の損失が出たとします。個人でトレードしていた場合、FXによる収益は雑所得扱いのため自営業の収益との損益通算ができないことになります。

この例の場合は、FXによる税金はもちろん0となりますが、自営業の収益には事業所得としての通常の課税がされてしまうことになります。自分の手元に残るお金は500-500=0なのにも関わらず、事業所得としての税金はしっかり納めなければならなくなります。

これに対して法人化していたときには、事業所得との損益通算が可能です。自営業による500万円の収益とFXの500万円の損失が合算されて、納める税金は0となります。収入の柱がFX以外にもあるという方には、損失を出してしまったときの大きなリスクヘッジになると言えます。

更に、この損益通算は他の金融商品の売買にも適用されるので、株式や先物取引なども行っている方にもメリットとなります。

4.個人よりも高レバレッジでトレードできる

専業トレーダーとして生き残っていくためには、とにかく大きな利益を上げ続けていかなくてはいけません。年に数回のここぞというチャンスのときには、大きく勝負していく必要もでてきます。

個人でトレードしている場合には25倍のレバレッジ規制があり、それ以上のレバレッジを効かせることは法律上不可能です。しかしながら、法人口座を使っての売買ではこの規制の対象外となり、400倍ものレバレッジを効かせることも可能となります。(400倍まで使うことはありませんが。)

規制を受けることなく、FXの利点をフル活用できるようになることは大きなメリットと言えます。

5.忘れてしまいがちな国民健康保険料の高さ

収益が上がるようになると、税金への意識は高くなりますが、ついつい忘れてしまいがちなのが国民健康保険料です。

個人での所得が高くなると、どんどんつり上がるのがこの国保です。確定申告を無事3月に終えて一息ついていると、6月になって国保の請求金額を見てびっくりするようになります。

これも法人であれば、役員報酬を調節することで保険料を抑えながら、社会保険への加入も視野に入れることができます。本気で専業トレーダーを目指している方には、国保も大きな固定費であることを抑えておきましょう。

6.法人化によるデメリットも押えておきましょう

FX法人のオフィス

このように考えていくと、法人化は良いことづくしのように聞こえますが、その反面デメリットも存在します。

6-1.設立時や法人住民税・税理士への報酬などの費用が増加

まずは法人設立時に、当たり前ですが諸々の諸費用が発生します。ほとんどの方が法人設立は初めてになると思いますが、自分一人で登記するとなると知識はもちろん余計な時間もかかってしまいます。

専門家の方にお任せする形になると思いますが、株式会社であれば20〜30万円程度の費用が必ずといっていいほど発生します。FX以外の事業は行わない・なるべく安く法人化したいといった場合には、最近では10万円程度で設立できる合同会社形式なども人気のようです。

また設立後も、年間収益が0や赤字の場合でも、法人住民税という新たな税金が毎年約7万円程度発生します。更には、法人での記帳や確定申告は相応の知識が必要になりますから顧問の税理士さんをつけることになります。相場は、毎月2万円前後と決算報酬を含めて年間30〜50万円程です。

トレードによってしっかり収益が出ているのであれば、この程度の諸経費は節税効果によってペイできるかと思います。逆にこの経費を支払えない収益状態であれば、法人化のメリットはありません。

6-2.会社のお金という扱いになり、自由な出し入れが不可能

トレードによる収益は、あくまでも会社のものという扱いに変わるため、個人のときのような自由な使い方は難しくなります。

法人のトレード利益は法人口座に入金され、役員個人がこれを勝手に引き出して使うことはできません。役員が自由に使うことができるのは、法人から支払われる役員報酬だけです。個人として使うお金を増やすためには、この役員報酬を新たに改定したりなど諸々の手続きを踏まなければいけません。

法人のお金を勝手に引き出すと、税務上のトラブルになる可能性があります。役員が法人からお金を借りた場合には、法人に貸付金利息を支払うなどの貸借関係を明確にする必要があります。

稼いだお金はパーッと使おうなどという方はもちろん論外ですが、お金の出入りのコントロールが煩わしくなることは抑えておきたいところです。

7.法人をもつことによるメリット・デメリットまとめ

順調に収益が上がってきた・本気で専業トレーダーへのシフトを考えているという場合には、法人化は避けては通れないというのが結論です。大きな節税効果を含めて、損失へのリスクヘッジ・レバレッジによる収益拡大など、得られる利点はデメリットに比べてはるかに大きいものとなっています。

実際に法人をもつべきタイミングや効果面については、法人取引をしている知人や専門家の方などにアドバイスを受けてみるのが一番だと思います。

また、個人でトレードし続けている限りは個人投資家・トレーダーという肩書きですが、社会的な信用は全くありません。法人化によって代表取締役や代表社員となれば、社会的には社長という位置付けとなります。心理的な効果として、より緊張感と責任をもって相場に向き合えるようになるのではないでしょうか。

相場と本気で向き合う専業トレーダーになるためには、法人化は一つの登竜門であると言えます。

■今後の参考に

私の現在のトレード環境も記事にしています。これから本気で相場に向き合っていくに当たっての、参考になればと思います。詳細は、こちら