どんなに優れたトレード手法であったとしても、損切りによる損失を100%避けることはできません。トレードする以上、いかにこの損切りを適切に行えるかが、資金を増やす最大のポイントとなります。
利益幅は、いくら気合いを入れても踏ん張っても伸びてはくれませんが、損切り幅はトレーダー側で完全にコントロールが可能です。稼ぐトレーダーになるためには、この唯一最大の優位性をしっかり活かさなくてはいけません。
1.エントリーと同じくらいその損切りに根拠はある?
勝ち続けているトレーダーに共通しているのは、大きく勝つことはもちろん、損切りによる損失を最小限に抑えているということ。逆に相場から撤退するトレーダーに共通しているのは、多額の損失を1回の取引で出してしまうことです。
FXを始めると、どうしても大きく稼ぐことばかりを考えてしまいます。そのための手法や知識を高めることに意識が向かいますが、負ける技術についてはおろそかになりがちです。大きく勝つことばかりを考えている人は、損失が避けられない状態になった時、それをどう認識し行動すべきかが分からなくなってしまいます。
エントリーと同時に損切り値を設定することは、トレードの基本です。エントリー前に、利確目標・損切りラインを把握しておくトレード計画が全てです。ポジション保有後は、精神的にも落ち着かなくなることが多く、正常な判断ができません。
また、エントリーするタイミングについては、自分なりの根拠をもってトレードされている方が多いと思います。では、損切り値についてはどうでしょうか。いつも10pips下に固定しているなど、そこに根拠もなく適当に設定している方が多いのではないでしょうか。
FXで勝ち続けるためには、まずは生き残っていかなくてはいけません。生き残り続けることで、勝ちを確実にするための時間も確保することができます。
2.100%勝てるトレード手法は絶対に存在しない
FXのトレード手法は様々であり、書籍やネット上でもたくさん公開されています。非常にシンプルなものから、多くのテクニカルツールを組み合わせた複雑なものまで多種多様です。
ただ、その手法を利用することで全てのトレードで勝つことはできないということ。プロのトレーダーの方でも、必ず損切りとなるトレードを何度も繰返しています。
彼らが稼ぎ続けて生き残っているのは、大きく勝つことに加えて、この避けられない損失を可能な限り小さく抑えているためです。言い換えると、損切り値が小さくできるトレードしかしていないということです。それぞれのトレードで、トータルとしてのプラスを実現しています。
特に初心者の方は、小額であっても損失を引き受けることができず、損切り値を動かしたり無くしてしまうことでずるずると大きく負けてしまいます。これは感情や期待でトレードしている結果であり、そこに自分の確固たるルールや規律はありません。そんなことを幾ら続けても、たまに勝つことはあってもトータルで勝つことは絶対にできません。
また含み損を抱えると、これから思惑通りのレートになるはずだと、自分を正当化する根拠を探してしまいます。不安を払拭し安心するためです。しかしながら、計画とは違うと感じた時にするべきは、自分を落ち着かせることではなく即損切りすることです。
根拠をもって小さく損切りするトレードは、負けトレードではなく、次に繋がる勝ちトレードと言えます。
3.トレードは勝率ではなくリスク/リワード比で考える
投資の基本は、損小利大です。リスク(損失)に対して、リワード(利益の期待値)が高いトレードをすることなしに資金を増やしていくことはできません。
リワードについては相場次第ということになり、こちら側でいくら気合いを入れても調整することはできません。こちら側でできることは、「利が伸びやすいところでトレードを繰り返す」ということだけです。
しかしながら、損切りについては、こちら側で完全にコントロールが可能です。どこまで伸びてくれるか分からないものを追いかけるよりも、コントロール可能な損切りをしっかり考えることの方が、確実に資金を増やす早道です。
3-1.リスク/リワード比が改善できれば勝率は低くて大丈夫
リスク/リワード比というのは比率であるため、利をそれほど伸ばせなかったとしても、損切りラインを限りなく小さくすることができれば、非常に勝ちやすくなります。
上図のように、利確幅も損切り幅も同じ10のトレードを続けた場合、勝率5割で利益はトントンとなります。手数料となるスプレッドを考慮すると、マイナスになりますね。ここで極端に言うと、利確幅はこのまま10で損切り幅を1にすることができれば、勝率は2割であったとしても十分資金はプラスにすることが可能となります。
なかなか資金が増えない・トータルで勝てないというのは、この損切りをおろそかにしてリスク/リワード比の低いトレードを繰り返していることがほとんどです。しっかり一方向に伸びやすい相場環境の中で、損失を限定できるポイントでトレードを繰り返している限り、逆に言えば資金が減ることの方がおかしいのです。
3-2.考えられる損失を極限にまで削る
トレードする毎に、手数料としてかかってくるスプレッド。最近ではFX会社の競争も激しくなり、ドル/円やユーロ/ドルなどの通貨ペアでは、1銭(1pips)以下というものも当たり前となってきました。普段忘れがちなスプレッドですが、このような低スプレッドの通貨ペアでトレードすることも、勝ちやすくする一つの方法です。
通貨によっては、ドル/円やユーロ/ドルの数倍ものスプレッドが設定されているものもあります。だからといって、利幅も同じように数倍見込めるわけではありません。リスク/リワード比の観点から考えても、敢えて高スプレッドの通貨で取引を続ける意味は全くないのです。
このように、こちら側でコントロールできる損失は極限にまで減らし、リスク/リワード比を少しでも改善していく意識が大切です。
3-3.手っ取り早くリスク/リワード比を高めるには
リスク/リワード比を高めるためには、以下の3つの方法が考えられます。どの方法が、もっとも手っ取り早く高めることができるでしょうか。
1.損失を減らして、利益を伸ばす
2.損失はそのままで、利益をより伸ばす
3.損失を減らして、利益はそのまま
1については、現状よりも損切り幅を狭くする工夫し、さらに利を伸ばすトレードをしなければいけません。これができれば最高ですが、最もハードルの高い方法ですね。
2については、損切り幅は現状のままで、何とか利を伸ばす工夫をする方法です。1と比べると、少し難易度は落ちました。多くの方が、この2の考え方で様々な手法などを試されているのではないでしょうか。3については、利を伸ばす必要はありません。損切り幅を狭くする工夫を、少ししてあげるだけです。
多くのトレーダーは、一般的に利を伸ばすことが苦手です。人の心理上、少しでも利益がのれば早く利確してしまいたくなり、ついつい薄利でトレードを終えてしまいます。この人の心理を考えると、1や2は意外と難しいのです。また、利益は相場次第ということもあり、伸ばそうと思っても伸ばすことができない性質のものです。
それに比べて3では、損切り幅を現状より少し狭くする工夫をするだけです。もちろん、ただやみくもに狭くしても小さな意味のない損切りを繰り返してしまうので、根拠をもった損切り幅であることが大切です。
現状の損切り幅を狭くすることさえできれば、勝手にリスク/リワード比は高くなりますよね。そうすれば、多少勝率は悪くともトータルで資金は増えていくことになります。
手っ取り早くトレードで勝つための改善策は、まずは現状の損切り方法を見直してみることです。その次にすることが、利を伸ばす技術を身につけることです。
3-4.リスク/リワード比を改善するトレードの一例
基本的な損切りラインとして、よく使われるのが直近高値(安値)に設定するものです。下落を前提としたショートエントリーの場合、直近の高値を抜けてくれば、その後上昇に転ずる確率が非常に高くなるので、そのラインに損切りを設定することは理にかなっていますね。
ただ、この損切り設定では、損切り幅が広くなることが多いのが欠点です。しかしながら、トレードに少し工夫を加えることで、この損切り幅を狭くしリスク/リワード比を高めることが可能になります。
例えば上図左のように、直近安値を割るポイントでのブレイクを想定したエントリーがあります。このままでは、少し損切りラインが遠くなってしまいますね。
ここで少し工夫をして、上図右のように分かりやすいラインを1本引いてエントリーができれば、損切りラインはそのままでもリスク/リワード比は勝手に改善されることになります。
このように、できるだけリスク(損切り幅)を抑えたトレードを意識するだけで、トータルとしての勝ちが見えやすくなります。ただし、ちょっとした値のブレに負けて小さな損切りを繰り返してはいけません。あくまで、根拠のある損切りラインであることが前提です。
4.いくら熟練しても損失は永遠になくならない
まずは、損失を避けることはできないということを受け止めることが大切です。誰も未来を知ることはできない以上、全てのトレードで勝ち勝率を100%にするのは不可能です。
負けを避けることに注力するのではなく、損失をコントロールするという意識が大切です。可能なのは、予定外・想定外の致命傷となる多大な損失を避けることだけです。
5.損失からしか学ぶことはできない
たとえ小額であっても、損失を引き受けることは非常に辛いものです。それが連続して続くようなときには、メンタルも乱れてしまいます。
ただ、負けトレードからしか学べないというのも事実。勝ちトレードからは高揚感や充実感を得ることはできても、トレーダーとしての成長に繋がることはありません。人は負けたときにしか学ぶことができないのは、FXだけでなく人生全般に言えることだと思います。
1回1回の取引を振り返り、特に負けトレードについてはその理由をしっかり分析することが大切です。分析を根気よく続けていくと、負けるときの共通項が見えてくるようになります。それらを一つ一つ潰していくことで、勝率も自然と引き上げられていきます。
負けによってただ気分を落とすのではなく、次のトレードへ活かす授業料を払ったという意識で自分の糧にするという、前向きな姿勢が大切です。必ず勝てる取引が存在しない以上、トレーダーが確実にできることは適切な損失コントロールだけです。
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